シドニー五輪の水泳女子200メートル背泳ぎ決勝で、3位に入り銅メダルを獲得した中尾美樹さん(左)は、筆者(萩原智子さん)から祝福を受け、涙があふれた=2000年9月22日、オーストラリア・シドニー(川村寧撮影)【拡大】
表彰式で中尾さんの優しさが身に染みた。それと同時に、ずっと気になってきた「優勝」の意味が理解できた。優れている人が勝つという意味で使われることが一般的だが、私の中で「優勝」とは、「優しく勝つ」とも考えることができるようになった。だから中尾さんは、あの200メートル背泳ぎで優勝したのだと。
もちろん勝負の世界。優しさだけでは勝てない。しかし優しさと強さを兼ね備えた人だったからこそ、頂点に立てたのではないだろうか。私は今でもそう思っている。人に優しくできるのは、自分自身に強い信念があるから。だからこそ、人に優しくできるのだと私は信じている。
結果は目に見えて、形として残る。しかし優しさというものは目で見ることはできない。だからこそ、自分の心の中に深く刻まれる。私はスポーツから、真の優しさを教えてもらった。どんな世界でも、頂点を極めるには相当な努力と精神力がいる。そしてそれと同時に、人間として大切な優しさも重要なのだと痛感している。