プロセスやり直し
香港でのデモは、中国側が2017年の香港行政長官選で立候補資格を制限し民主派を事実上排除する決定に反発して起きた。中国指導部は、長官選で親中派以外の選出は絶対に許さない方針のため、民主派排除の決定の「撤回は不可能」(梁氏)だ。多くの学生も中国が一度決定したことを覆すのは難しいと認識し、親中派として極めて不信感の強い梁氏の辞任に照準を定めつつある。
過去には、初代行政長官、董建華氏が05年3月に任期満了まで2年余りを残して辞任。体調悪化を理由に挙げたが03年7月に国家安全条例の制定に反対する市民ら50万人によるデモをひき起こした責任や新型肺炎(SARS)への対応の遅れなどを問われ、事実上中国に解任された形だった。
梁氏が辞任すれば、現在行われている長官選の制度改革プロセスは「梁氏が提出した報告書に基づく改革」だったとして、新長官の下でプロセスをやり直すことが可能になる。中国は決定を撤回する必要がなくなり、メンツは保てる。
しかしこれまで学生らの行動を「違法行為」としていた中国政府が要求を受け入れたことになる。中国国内で暴動が頻発する中「大規模抗議行動を起こせば行政府トップの首を取れる」との印象を与えればさらなる暴動を呼びかねず、譲歩も難しいのが現状。事態収拾への鍵を握る中国の習近平指導部は困難な選択を迫られている。(共同/SANKEI EXPRESS)