エリンは母の最期の謎めいた行動で、なんとか生き延びるのですが、その後も彼女自身望まぬままに運命の波にのまれていきます。闘蛇を操るすべを知っていた、霧の民(アーリョ)と呼ばれる一族の血を引く母、その母の血を受け継いでいるエリン。闘蛇を大いなる武力とする大公、その闘蛇を喰らう、翼を持つ聖なる獣、王獣。幼いエリンが奇跡的に命を長らえ、さまざまな経験をし、成長し学ぶうちに、聡明な彼女は自然と、野生に生きる獣と人間に飼われる闘蛇や王獣の違いに気づいてしまいます。その気づきとエリンの獣-あるいは生きとし生けるものすべてへ向けられる優しさが、彼女をさらなる過酷で重大な運命の岐路に追いやるのです。
闘蛇編から始まり、第4部の完結編まで続く物語の舞台はとても壮大です。ファンタジーの枠に収まりきらない世界観を感じます。けれどもすべてが浮世離れしている別世界とも思えないのです。まるで、遠い過去にこの国は実在したのではないか、とすら錯覚してしまいそうになります。設定が細かなところまで練り込まれているからでしょう。