幼い時の記憶がどのぐらい残っているかは、ずいぶん個人差があるらしい。私は、なぜか小学生以下の時の記憶がたくさん残っている。今でも覚えているのは、小学校1年生の朝礼のときのことだ。体育館でみんなで歌った歌に「ビューティフル・ネーム」という歌があり、サビのフレーズを繰り返し歌った。
実は、その年1979年は、「児童権利宣言」(59年採択)の20周年を記念して国連が「国際児童年」と定めた年で、この歌は、ゴダイゴというバンドによる「国際児童年」のテーマ曲だった。この年、世界中が子供の問題を考え、解決のために力を尽くしていこうとする動きがまとまり、「子どもの権利条約」を現実のものとするための作業部会が国連に設置された。当時の私には、そんな複雑なことはわかりようもなかったが、学校の先生が、「子供は大切にされなければならないんですよ」というメッセージを発信していたのを覚えている。
子供は大人と異なる存在で、「子供だから」認められるべき権利がある、という考えは、今でこそ当たり前だが、世界で共有されるようになったのは20世紀のことであり、比較的新しい概念といえる。戦後間もない48年にすべての人は平等であるとした「世界人権宣言」を経て、59年に「児童権利宣言」が生まれた。ここでうたわれた精神を、宣言に終わらせることなく、実際に効力のある権利条約にしていくための動きが始まったのが、79年の「国際児童年」だったのである。