それは不思議な光景だった。住民避難で寂寥たるゴーストタウンと化した地区を偵察する陸上自衛隊の装甲車が信号待ちしていた。I二曹が説明した。
「荷物でも取りに来たのか、民間の車とすれ違った。急ぎたかったが信号は守った」
長崎県警交通部に「信号無視すれば違法か?」取材した。
「避難命令無視とはいえ、わずかでも人がいる。道路性はあるので、道路交通法は守ってほしい」「ただ、法自体こうした緊急時を想定していない。遮断地区だし、任務の緊急・重大性を考えると、守らなかったとしても責められない」
防衛大臣の承認を得て駐屯地司令らが都道府県公安委員会に申請した赤色灯付緊急車輌と、緊急車輌が先導する車列以外、あくまで原則だが交通法規は守らねばならないのだ。
以下は、今以上に悪質で幼稚な非戦反軍の時流を考慮し、産経新聞の長期1面連載《岐路に立つ自衛隊》でも書くのを躊躇した現実の数数。
信号待ちした装甲車は、ほとんどの部隊に未配備の最新型だった。火砕流を受けても、車輌内で防火服を着ていれば旧来型に比べ退避時間が稼げる(それでも短時間)耐弾性能が期待され、東日本より急送された。