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曖昧だけど確かに存在する自分だけの湯河原 長塚圭史 (3/4ページ)

2014.10.14 15:40

この海の向こうに、私の記憶の中ではなく、現実の湯河原があるのだ=2014年10月2日(長塚圭史さん撮影)

この海の向こうに、私の記憶の中ではなく、現実の湯河原があるのだ=2014年10月2日(長塚圭史さん撮影)【拡大】

  • 【続・灰色の記憶覚書(メモ)】演出家の長塚圭史さん(提供写真)

 ハッキリと覚えているわけでもないのだけれど、どういうわけか私にとって湯河原の砂浜は灰色以上にどんよりとくすんでいて、海水を含んで重たかった。何枚かの写真がそうした気分を思い起こすのだ。痩せていて、おしゃれをしてはしゃいでいる母とKに比べると、私は取り残されたような顔をしている。取り残されたような顔を私がしているから、母とKは笑っているのかもしれない。とにかく湯河原は、母たちの浮かれたバカンスではなく、私のためにやってきた地のように思えてならない。

 生まれて初めての洪水

 この湯河原で生まれて初めての洪水を体験する。夜だ。停電して、ろうそくの炎を眺めていた。やがて道路が冠水して、避難しなければならず、幼い私は戸板のようなものの上に乗っかったように思う。海からひとつなぎになっているような気がして恐ろしかったけれど、停電したところから、ろうそく、冠水、戸板という風景は面白く、劇画のように覚えているが、おそらくはその後いくつも見たニュースの映像が混ざってしまっていて、オリジナルの記憶が残っているのか怪しいものだ。

何もかも確かめられる時代になった

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