1年半に及ぶ旅行で、今でもまぶたに焼き付いている光景がある。漠然とした大地がどこまでも続く、パタゴニア地方の風景だ。
パタゴニアはチリとアルゼンチン南部の総称で、南緯がほぼ40度以南のエリアを指す。両国の境界線にアンデス山脈が走り、西側のチリは強い偏西風が山脈にぶつかるため比較的雨が多く、東側のアルゼンチンは乾燥していて、表情豊かなパタゴニアの自然が迎えてくれる。
面積は日本の国土の約3倍ある。鳥の鳴き声も聞こえない、世界の最果てのような乾いた大地をひたすら走る。「この先に街なんてあるはずがない、人が住んでいるはずもない」と信じたくなるほど何もないが、何百キロ先には、街があり、人々が穏やかに生活を営んでいる。街と大自然の風景が繰り返し現れ、どんどん南下していく。
私はアルゼンチン側に長く滞在した。一年を通して涼しく、空気が澄み、乾燥しているため、寒さも都会の寒さとは全く違う。透き通った、すがすがしい冷気は心地がよい。ふと見える、まるで生きているような雲の動きにあっけにとられ、草むらでつながれた馬と目が合い、犬同士が無邪気に追いかけっこをしているような、のんびりとした時間が流れる。広大な自然を身近に感じる生活は、本当に居心地が良かった。