02年の会談では、田口さんや横田めぐみさん(50)=拉致当時(13)=ら被害者8人を何の根拠もなく、「死亡」と説明。04年の会談でも再調査に応じながら、その後出してきたのは矛盾だらけの説明とめぐみさんの偽遺骨だった。
拉致問題をめぐり、北朝鮮がこれまで誠実に対応したことは一度もない。その狡猾(こうかつ)さを家族は身をもって味わってきただけに、北朝鮮が呼びかけた形での訪朝には、危険を感じた。
被害者の一日も早い救出を家族は誰よりも願っている。その思いを押し殺し、確実な成果を得るため、政府に「焦らないで」と訴え続けてきた。飯塚さんは「早く何とかしなければいけないという気持ちだけで、北朝鮮の言いなりになってはいけない。日本が焦って譲歩することが北朝鮮の狙いだ」と話す。
「首相の決断なら」
今も訪朝に慎重論を抱えながらも、家族が最終的に受け入れたのは、安倍晋三首相(60)の存在ゆえだ。衆院議員になる前から変わらず拉致問題に取り組んできた。「私たちが言うまでもなく、家族の気持ちを知っている。首相がこれまでの経験をもとに家族や被害者を思い浮かべて決断したのであれば任せるしかない」