北朝鮮の調査委員長に就くソ・テハ氏とはどんな人物か。肩書から、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記(31)の“陰の秘書官”といえるほど強い権限をもっていることが指摘されている。調査委は国家安全保衛部をはじめ、北朝鮮の主要機関を横断する布陣だ。しかし、拉致を実行した朝鮮労働党工作機関が入っておらず、再調査の実効性が担保されるか疑わしい面もある。
ソ氏について北朝鮮は、保衛部副部長兼「国防委員会安全担当参事」の肩書で紹介した。軍出身の70歳前後とされるが、ほとんど公の場に登場していない。
秘密に迫る鍵は「金第1書記就任と前後し、権限集中により体制が強化された秘書室にある」と、北朝鮮の権力構図を研究する李相哲龍谷大教授は解説する。秘書室メンバーの多くは国防委の重要政策担当の参事や、党各部を仕切る第1副部長級を兼ねるとされる。
2月の南北離散家族再会の際も、北朝鮮側責任者は「国防委政策担当参事」で、実際は秘書室の主要メンバーとされた。“陰の官邸”である秘書室メンバーとして金第1書記の直接指揮下にあることが重要で、ソ氏も強い権限を委ねられていると考えられる。