≪賭けに出た安倍首相「今がラストチャンス」≫
「これはスタートでしかない」。安倍晋三首相は7月3日、北朝鮮に対する制裁の一部解除を決めた関係閣僚会議後、厳しい表情で語った。首相周辺は「今が拉致問題解決の最後のチャンス」とにらむ。それだけに、賭けに出た首相は外務省をはじめ政府関係者に入念な極秘協議を命じていた。
4月12日、愛知県の中部国際空港。外務省の小野啓一・北東アジア課長は、通訳の部下1人を連れ、中国・大連行きの飛行機に乗り込んだ。大連行きの直行便は成田空港からも出ているが、マスコミの目を避けるため出発地を変えた。
拉致被害者の再調査をめぐり、小野氏は昨年(2013年)末からベトナム・ハノイや中国・上海などで北朝鮮と極秘に協議を重ねていた。3月末に日朝局長級協議が1年4カ月ぶりに再開してからはほぼ毎週末、接触した。
極秘協議には金指導部に直結する国家安全保衛部の幹部とみられる人物が参加。「名乗らないが、保衛部の副部長クラスが出てきた」(外務省幹部)ことも、日本が真剣に交渉を続ける裏付けになった。
複数の日本政府関係者によると、4月以降は、日本が独自に実施している経済制裁が主な議題になった。北朝鮮側は「包括的かつ全面的」な再調査を約束し、その見返りとして「これを解除してほしい」と具体的に要望してくるようになった。