陸上自衛隊の実弾射撃訓練「富士総合火力演習」で展開する74式戦車。自衛隊の作戦を担保する現行法は「こうあるべき」論に支配され、柔軟な即応を阻害している=2014年8月23日、静岡県の東富士演習場(酒巻俊介撮影)【拡大】
割り込んだ「周辺事態」
日本領域を含む後方地域こそ、破壊活動で日本を威嚇し、米軍支援より手を引かせる特殊作戦部隊や工作員による騒擾(そうじょう)の舞台。ミサイルの攻撃目標にもなる。戦域拡大とともに、後方地域=非戦闘地域は一夜にして戦闘地域=日本有事に変わる。だのに、自衛隊の武力行使を唯一可能にする《防衛出動》のハードルは異様に高く、警察力のみで圧倒的優勢な火力や化学兵器を警戒する下策さえ強いられる。防衛出動下令には自衛隊法+国会答弁で《他国のわが国に対する計画的、組織的攻撃》が対象となるためだ。
法制の欠陥を熟知する敵なら、防衛出動を下令させないよう策動する。各地の線路に石を置き列車を転覆させれば、わが国は大混乱に。事故かイタズラか不明。外国の特殊作戦部隊や工作員、テロ集団は名乗らない。国内過激派だと偽るかもしれない。国家と承認されぬ、正規軍並みの兵器を持つ《イスラム国》系も排除できない。
しかも、時系列も地域も烈度・規模もモザイク状に入り乱れ、変幻自在に行ったり来たりを繰り返す。北海道は“有事”で九州は“平時”。“平時”と“周辺事態”と“有事”が混在し法律上、事態を断定できない危機が続く。自衛隊に対テロ・ゲリラ《治安出動》が発せられるだろうが、武器使用は一定限度を超える敵の武力が確認されぬ限り警察と同じ《正当防衛か緊急避難》時だけ。