とはいえ、首相自身が「中国側にはおそらく中国側の考え方があるわけだが…」と認めるように、領有権問題の存在の確認を要求し続けてきた中国側にすれば、日本側が歩み寄ったと評価している。国際的な宣伝戦で「日本が領有権の存在を認めた」と触れて回る可能性が高い。
こうした事態を見越してか、日本側は合意文書の解釈をめぐる発信に余念がない。首相や外務省幹部が7日夜に日本の立場を繰り返し説明したほか、8日には石破茂地方創生担当相も読売テレビの番組で「(尖閣に)領土問題があることを認めたわけでない。日本の姿勢はまったく変わらない」と強調した。
「不測事態回避」保証なく
米国を含む国際社会が最も関心を寄せているのが、日中間における軍事的緊張の緩和だ。中国軍による射撃管制用レーダー照射や中国軍機の異常接近が相次ぐなか、偶発的な衝突につながる危険をはらむからだ。
この点について合意文書は「危機管理メカニズムを構築し、不測の事態の発生を回避することで意見の一致をみた」と明記。日中両政府が大筋合意したままたなざらしとなっている「海上連絡メカニズム」の早期運用開始に期待が集まる。