海から森を見渡し、白い点が見えたらそれは大抵ハクトウワシである。樹齢数百年、高さ40メートルはあろうかという大木のてっぺん付近に、彼らは鎮座している。乱獲や薬剤などの影響で生息数が一旦激減したが、その後の保護政策により、今では南東アラスカでこの鳥を見かけない日はないほどだ。
羽を広げた長さは2メートル以上。風格漂うそのたたずまいは、アメリカの国鳥としての威厳すら感じさせる。
高みから見つめるのはフィヨルドの海。1キロ以上離れた場所の獲物をも見分けるといわれるその視力で、海面近くを漂う魚を探すのだ。
ロックオン! ふわりと飛び立った後はまるで吸い込まれるように獲物へと向かう。海面すれすれを飛びながら、一瞬だけ足を伸ばし、鋭い足で獲物を連れ去る。
アラスカの空を支配する洗練されたスナイパー。それがこのハクトウワシの本来の姿なのである。
≪思わぬ災難もあくまで優雅≫
ところが、いつもそううまくいくわけではない。何が起こるか分からないのが自然界。精悍(せいかん)な面構えが思わぬ災難にゆがむこともあるのだ。