カナディアン・ロッキーの入り口、バンフの街から車で約3時間のヨーホー国立公園にあるエメラルド湖。ここから東に見えるワプタ山の稜線(りょうせん)には、1909年に古生物学者、チャールズ・ウォルコットが生物学の歴史を変える化石群を発見した「ウォルコット採石場」がある。
発見された化石は古生代カンブリア紀中期(約5億500万年前)のもので、堆積(たいせき)岩の一種である「バージェス頁岩(けつがん)」の中に隠されていた。5つの目を持つオパピニアや三葉虫を餌にしていた体長1メートルもあるアノマロカリスなど、ここで見つかった奇妙な形をした多くの生物はこの時代に突然現れ、それらの多くは絶滅してしまった。なぜこの時代に多くの生物が出現し、なぜその多くが絶滅したのか、これらの化石は生物の進化に新しい謎をもたらした。
こうした話題が一般に知られるようになったのは89年、進化生物学者のスティーブン・J・グールドが『ワンダフル・ライフ バージェス頁岩と生物進化の物語』を著したためである。グールドは進化は少しずつゆっくり進むのではなく、短時間で急速に進み、その後長い時間停滞するという「断続平衡説」を発表。これに進化生物学者、リチャード・ドーキンスらが異を唱えた。ダーウィン以来の進化論に全面的な見直しを迫るこの論争は今も続いている。