そのハクトウワシは翼を広げ、風を切り裂いていた。数秒後には獲物となるはずの魚へと一直線。あとはいつものように魚をわしづかみにし、飛び去るだけである。
足を伸ばす。と、白い頭が海へと突っ込んでしまった。そのままもんどりうって全身が海水に浸り、まるで溺れて助けを求める人間のように羽でバタバタと海面をたたき始めたのである。見ているこちらも何が起こったのか分からない。それほど珍しい失態だった。どうやら捕まえた魚が大きすぎたようだ。重すぎて飛び立てず、海に落ちてしまったのだ。
その後の彼の行動を一生忘れることはないだろう。なんと彼は泳ぎ始めたのだ。岸までの100メートル近くを延々と。しかもなんとバタフライで! ビデオも撮ったから嘘ではない。
水没しても優雅に海面を切り裂くハクトウワシ。さすが国鳥である。(写真・文:写真家 松本紀生/SANKEI EXPRESS)