それでは、こちらがわざわざ便利なネットショッピングを諦めてまで、こうして足を運んだ苦労が何も報われないではないか。むっとした私は思わず「じゃあ、購入は考えます」と言ってしまった。こうしてまたネットに流れるお客が一人増えてしまいますが、それはあなた方の責任ですよ、いいんですねっと言わんばかりに。
だが、帰り際、父親の年ほどの店員の物悲しい目を目撃した私は、自分のあの性分―弱いものを守りたくなる精神を思い出し、はっとした。あれっ、今自分がやったことって、もしかして、ものすごく、醜いことなのかしら。ネットの価格は、この人たちの仕事とは本当は、関係ない話なのかしら…?
以来、心を入れ替え、家電はまた直接お店で買うようになった。そして、周りにもそうするようにそれとなく促し始めた。みんな、がんばってるお店を応援しよう。実際に足を運ぶことの大事さだとか、自分の得ばかり考えないことの気持ちよさだとか、生身の人間の絆がこれからの社会でどんどん必要になっていくだとか、家電店を支える理由はいくらでも見つかった。
考えれば元は「強かった」
だが、ある日、私はまたまた大事なことに気づいてしまう。よく考えてみると、細々頑張っている個人商店を潰したのは大型家電量販店、まさしくあいつらなのだった。あいつらもネット家電が出てきたから、弱い立場になっただけで、どう考えても、因果応報、自業自得なのだった…!