複雑な気持ちだが、またネットで家電を買うべきだとは思わない。ここは直に買う大切さを守るべきだと思う。しかし、もしもこの先、ネットよりもさらに人間性が希薄になる、快適で便利なものが現れたとき、私はどうするのだろう? 今の家電店を応援するのとまったく同じ気持ちで、「ネット家電頑張れ!」「ネット頑張れ!」と肩入れしてしまうのではないか。
そう考えると、もはや家電販売の未来というより、そんな滑稽な性分を持った自分のほうが、より心配だ。将来、自分が何を応援しているか、分かったもんじゃない。(劇作家、演出家、小説家 本谷有希子/SANKEI EXPRESS)
■もとや・ゆきこ 劇作家、演出家、小説家。1979年、石川県出身。2000年、「劇団、本谷有希子」を旗揚げし、主宰として作・演出を手がける。07年、「遭難、」で鶴屋南北戯曲賞を受賞。小説家としては短編集「嵐のピクニック」で大江健三郎賞、最新刊「自分を好きになる方法」(講談社)で、第27回三島由紀夫賞を受賞。