エスペランサ・スポルディングのライブでドラムを担当し、来日経験もあるオーティス・ブラウン3世は、オリバー・レイクといった大御所との共演も果たしている。ロバート・グラスパーのみならず、やはり新世代ジャズの注目株でハービー・ハンコックやウェイン・ショーターといった大御所からも絶賛されるグレッチェン・パーラト、ヒップホップ/R&B界の実力派、ビラルらをフィーチャーした『THE THOUGHT OF YOU』は豪華ゲストで話題沸騰中だが、僕はその音楽性を高く評価している。
ヒップホップやR&Bを理解した生演奏はジャズの強力な武器になり得るが、コンテンポラリーなリズムの導入は、時にジャズ至上主義者の関心を失ってしまう。新世代ジャズが人気を獲得すればするほど、「あれはジャズではない」という冷ややかな見解がミュージシャンに投げかけられるのだ。個人的にはジャズは即興芸術であると同時に時代とともに形を変えるものだと考えているが、50~60年代のモダン・ジャズこそが“ジャズ”と規定する風潮は、ジャズ至上主義者のみならず、一般人の間にも根強い。好奇心旺盛で頭の柔軟なリスナーは、新世代ジャズを歓迎しているが、まだまだ一部の動きにすぎない。