新世代が再び芸術化へ
しかし、このオーティス・ブラウン3世はオーセンティックなジャズ・リスナーにも訴求するスタイルの中に、ひそかに(そして過激に)現代の音楽の要素を混入させている。一聴すると50~60年代ジャズに通じるスタイルを持ちながら、随所にヒップホップやドラムン・ベースといったダンスミュージックの影響をちりばめ、巧妙にジャズの現代化を実現しているのだ。R&B的にドラムミングをするのではなく、高速ジャズにR&Bシンガーを起用するというアイデアも面白い。これは、大衆化というプロセスを経て、ジャズを復活させた新世代が再び芸術化を志向する発端なのかもしれない。
この作品が、グラミー受賞前に、セカンド・アルバム『IN MY ELEMENT』で同様のアプローチを試みていたロバート・グラスパーを触発するのではないかと期待している。ジャズ至上主義をうならせた上で、ポップスのリスナーやDJをうならせることは不可能ではないはずだ。かつてのアート・ブレイキーのように。ロバートやオーティスが日本のお茶の間で目撃される日が来るとは思わないが、新旧のジャズ・リスナーを結びつける鍵を、彼らが握っているように思う。(クリエイティブ・ディレクター/DJ 沖野修也/SANKEI EXPRESS)