土田高史さん(左)と辻了(さとる)さん(右)と山椒(さんしょう)を手にする松田美智子さん。「この山椒がなくなったら困る。いつまでも作り続けてくださいね」とエールを送る=2014年2月11日、和歌山県(長谷川みず穂さん撮影)【拡大】
棚田が残る集落だが、20年後には人口が約半分になると予測されている。「地方が都市にマッチしない人の受け皿となる時代になると思う。そんなとき、『地方の幸せ』がなくなっていては子供たちのためにならない。私にも3人子供がいますが、彼らのためにも、この土地での人の営みを続け、未来に選択の多様性をちゃんと引き継ぐことが私たちの世代の役割だと思っています」
木をすりこぎに
山椒は味だけではなく、調理道具としても食を支えている。実を結ぶという役目を終えた山椒の木は、干してすりこぎに。「山椒の木は皮がごつごつしているので、ぬめりのあるものもしっかり捕らえてくれるんです」と松田さん。
有田川町の「かんじゃ山椒園」では、山椒のつくだ煮などの加工品から、すりこぎまでを製造・販売している。代表の永岡冬樹さん(57)も金属加工業などを経て地元に戻ったUターン組。「和歌山のぶどう山椒の生産量は日本一。ぶどう山椒は日本オリジナルのものですから、和歌山の生産量は世界一ということになります。世界一のものがこの山の中にあったことに気づいた」