「quartets」(2008年)。写真提供:山口情報芸術センター。[YCAM]制作:大友良英+木村友紀+ベネディクト・ドリュー+平川紀道+石川高+一楽儀光+ジム・オルーク+カヒミ・カリィ+Sachiko_M+アクセル・ドゥナー+マーティン・ブランドルマイヤー共同開発:YCAM_InterLab【拡大】
即興で演奏されている音は、ドラム、ギター、シンセサイザー、笙(しょう)、トランペット、女性の声など約10種類。調和して不思議な音楽を奏でているが、面白いのは、対面している壁の映像が、楽器の音に合わせて動く。例えばドラムが2度たたかれると、壁の水滴の映像が、それに合わせて2度震える。
入場者は音の響きと、動く映像に包まれて、非日常的な空間に浸る。それが何か、知らない自然や宇宙の空間に漂っているような気分になる。
さらに、演奏はコンピューターでシャッフルされて再び組み合わされ、エンドレスになるように仕立てられている。入場者それぞれは、入った日時で、別々の演奏を聴き、別々の映像をみるように工夫されているのだ。
ジャンルを超えて
古くから音楽と美術は、2つのジャンルに分かれ、マーケットも別々に発展してきた。かつて音楽では、鑑賞の対象は1回だけの生演奏だった。一方、美術では絵画や彫刻が繰り返し鑑賞の対象となってきた。しかし今、CDや写真(デジタル画像)の普及を挙げるまでもなく、音楽、美術ともに二次的な鑑賞が一般的になりつつある。