上海市中心部の外灘(バンド)で起きた大規模な転倒事故で路上に倒れる人たち。36人が死亡する大惨事でありながら、地元紙の報道はわずか数行にとどまった=2015年1月1日未明、中国(新華社=共同)【拡大】
当局の「状況説明」をそのまま掲載した新聞もあったが、「殉職した消防士たちが浮かばれない」と、独自の取材で消防士5人の名前と写真を入手、掲載した地元紙もあった。
「まずは指導者を宣伝」
中国では一般に、大きな事件や事故が発生しても国営中央テレビ(CCTV)のトップニュースになることはない。指導者の外国首脳との会談や、地方視察などのニュースが優先される。その理由についてテレビ関係者は、「まずは指導者を宣伝しなければならない。同時に暗いニュースを大きく報じると国民の間に不安が広がり、混乱を招く可能性があるからだ」と説明した。
さらに、事件や事故についての報道でも、「党中央が重視している」「指導者が『全力で救援せよ』との重要指示を出した」といったアピールが中心だ。地震や土石流などの災害時も、テレビや新聞などで最も強調されるのは被災者の惨状ではなく、不眠不休で陣頭指揮を執る党幹部の姿である。