上海市中心部の外灘(バンド)で起きた大規模な転倒事故で路上に倒れる人たち。36人が死亡する大惨事でありながら、地元紙の報道はわずか数行にとどまった=2015年1月1日未明、中国(新華社=共同)【拡大】
被災状況よりも、指導者の宣伝を重視する報道姿勢は以前からのものだが、2012年11月に習近平指導部発足以降、メディア統制が強化され、さらに顕著になった。
外国の災害・事件は特大
しかし一方で、中国の官製メディアは、外国で起きた自然災害は大きく取り上げるのが通例だ。外国メディアを転電する形で、救援物資不足などの不備や、略奪の発生などの問題点を詳しく紹介する。地震や台風などを紹介する資料映像も日本や欧米のものを使うことが多い。
事件になれば、この傾向はさらに強くなる。新疆ウイグル自治区などで連続して起きた大量殺傷事件についてほとんど黙殺しているのに、米国で銃乱射事件が起きると、緊急番組や特集を組み、専門家たちが米国の銃社会を批判する。外国の治安の悪さを意図的に国民に印象づけようとしていることは明白だ。
北京のある人権派弁護士は「インターネットの時代にメディアを通じて世論操作する手法はもう時代遅れだ。自らの統治に対する共産党の自信のなさの表れだ」と話している。(中国総局 矢板明夫(やいた・あきお)/SANKEI EXPRESS)