フランスの風刺週刊紙「シャルリー・エブド」襲撃事件に続き、9日にパリ東部のユダヤ系食料品店で起きた立てこもり事件で、客を安全な場所にかくまって命を救った西アフリカのマリ男性店員のフランス国籍取得が特別に認められることになった。無事解放された人質たちから「陰のヒーロー」と呼ばれたこの男性店員をベルナール・カズヌーブ仏内相(51)は声明で「勇気のかたまり」と称賛。20日には内務省内で「フランス市民として迎え入れる」特別の式典が行われる。
冷蔵庫に6人隠す
この男性店員は、フランスの旧植民地であるマリ出身のラッサナ・バティリさん(24)。マリ国民のほぼ8割がそうであるように、バティリさんもイスラム教徒で、2006年からフランスに居住、昨年7月に国籍取得を申請した。しかし、なかなか許可が下りない状態が続いていた。
シャルリー・エブドを襲撃したサイド・クアシ容疑者(34)とシェリフ・クアシ容疑者(32)の兄弟と連動したアメディ・クリバリ容疑者(32)が9日午後1時すぎ、食料品店に押し入った時、店には店員と客ら約20人がいた。フランス通信(AFP)などによると、地下にいて「銃声が聞こえ、同僚や買い物客が走って行くのが見えた」というバティリさんは、とっさに「来い、来い」と声をかけて3歳の幼児を含む客6人を地下の大型冷蔵庫の中に誘導。照明や冷気も消して、声も潜めるように客に指示した。