これまで国内外のクロマグロ養殖は、捕獲した天然の成魚を太らせたり、天然の稚魚を捕獲したりして、成魚に育てて出荷するのが一般的で、天然のクロマグロ捕獲が必須だった。一方、近大は卵から人工的に孵化させ、稚魚まで育てる技術を確立したが、幅広い消費者に届ける販路拡大が問題となっていた。
充実した販路を持つ三菱商事グループが近大生まれのクロマグロを手掛けることで、販売面での課題は一歩前進した形だ。
三菱商事グループは今後、養殖と量産化の実績を積んで、あきんどスシローだけでなく、将来的にはスーパーなどへの販売も実現したい考えだ。
太平洋のクロマグロ漁獲の規制強化で、漁獲量の増加が見込めない中、天然資源に手を付けない養殖クロマグロの需要は今後もさらに強まりそうだ。(SANKEI EXPRESS)
■近大のマグロ養殖 近畿大は2002年、人工孵化して成長したクロマグロが、再び産卵する「完全養殖」に世界で初めて成功し、04年に卵から成魚まで近大で育てたクロマグロを「近大マグロ」として出荷を始めた。年間生産量は2000尾と少なく、東京や大阪の直営店のほか、一部の大手百貨店で不定期に販売。一方で、07年に水産会社や養殖業者向けに、人工孵化させた稚魚の販売を開始した。