一方で事件直後、ニコラ・サルコジ前大統領らが「混同(アマルガム)するな」と訴えたのは、イスラム過激派とイスラム教徒とを混同するな、という意味だ。フランスにはアラブ系(多くはイスラム教徒)が国民の約8%を占める。イスラム教徒イコール、テロリストでないことを明確に訴えたわけだ。フランソワ・オランド大統領の招待にベンヤミン・ネタニヤフ・イスラエル首相とマハムード・アッバス・パレスチナ自治政府議長ら各国首脳が参加し、バラク・オバマ米大統領の欠席をホワイトハウスが声明を出して「誤り」と認めたのも、このデモが「反テロ」だからだ。
「非宗教」が国是
フランスはまた、「非宗教」が国是である。公共の場でのイスラム教徒の女性のスカーフやブルカ(全身を覆った衣服)を禁止した通称「スカーフ禁止令」は決して「信教の自由」には抵触しない。この法律ではユダヤ教のキッパ(男性がかぶる小さな皿状の帽子)もキリスト教の大型の十字架も禁止されている。服装などによる宗教的規律から解放されるがゆえに《自由》であり、宗教的外見から無縁であるがゆえに《平等》であり、信仰とは無関係な市民的空間を構築できるがゆえに《博愛》だからだ。