帰国を待つ母の祈りは届かなかった。フリージャーナリストの後藤健二さん(47)がイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」に人質にされた事件は1日早朝、後藤さんを殺害したとする映像声明がインターネット上に公開され、最初の殺害予告から13日目に最悪の事態を迎えた。安倍晋三首相(60)は官邸で記者団に「痛恨の極みだ。テロリストたちを決して許さない。罪を償わせるために国際社会と連携していく」と訴えた。
身代金支払い交渉せず
政府は、公開された映像を1日午前5時前後(日本時間)に確認。直ちに、関係閣僚会議を開いた。菅義偉(すが・よしひで)官房長官(66)は記者会見で、映像はイスラム国によるもので、後藤さん本人の可能性が高いとの見解を示した。人質解放をめぐり、イスラム国側から日本政府への直接の接触はなかったと説明、「何が最も効果的であるかの観点から対応してきた。(イスラム国側に)一方的なプロパガンダの色彩があったことは事実だ」と述べた。
イスラム国側が当初、要求していた2億ドル(約235億円)の身代金支払いについては「交渉しなかった」と明言。その上で「人命第一で、可能な限りありとあらゆる手段を行使し、全力で取り組んできた。誠に残念で無念だ」と語った。