【アートクルーズ】
かつて「女の子写真」「ガーリー・フォト」などと半ば、揶揄(やゆ)するような呼ばれ方をした女流カメラマン、蜷川実花(1972年~)が、20年のキャリアを経て、変わろうとしている。いや、少なくとも発信してきたテーマの「伝え方」を変えようとしている。原美術館(東京都品川区)で開かれている「蜷川実花:Self-image」は、「あそこで変わったねといわれる」(蜷川)転機を期待させる大型個展だ。
入り交じる濃厚な黒
記者たちへの内覧会が行われた1月22日、原美術館の入り口には赤や黄の鮮やかな花が並んだ。芸能人から贈られた花も交じり、目もくらむ蜷川の原色カラー作品を賛美しているかのように見えた。しかし、展覧会そのものは予想に反して、色彩より陰影に満ちていた。
1階に展示されていたインスタレーション「無題」(2015年)には、金魚、唇、目、渋谷の雑踏などが登場する。渋谷慶一郎の音楽にのせて展開する映像は、複数の画像が重なり鮮明ではない。意識下(サブリミナル)に不安やざわめきを呼び覚ますような表現だ。