首相は第2次政権発足間もない2013年1月にも危機対応に追われた。日本人10人が犠牲になったアルジェリア人質事件だ。このときも現地の情報が限られるばかりか、首相官邸にもたらされる情報は錯綜(さくそう)した。首相は、こうした危機のたびに「情報不足」を痛感するとともに、その重要性を認識してきたはずだ。
首相はイスラム国による事件を受けて、「ヨルダンは極めて情報収集能力が高い」と述べ、海外で情報収集に当たる防衛駐在官を新たにヨルダンに置くことを検討する考えをすでに明らかにしている。各国の駐在武官(防衛駐在官に相当)は世界各地で軍人同士の「情報サークル」を形成しており、「軍の情報機関は同じ軍人にしか情報を渡さない慣習がある」(首相)ためだ。
だが、防衛駐在官を増員したところで、日本独自の情報をつかめるわけではない。