16時間にも及んだウクライナ和平交渉の途中で姿を見せた(左から)ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、フランスのフランソワ・オランド大統領、ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領、ドイツのアンゲラ・メルケル首相=2015年8月11日、ベラルーシ・首都ミンスク(ロイター)【拡大】
停戦合意にはロシア、ウクライナ、欧州安保協力機構(OSCE)、親露派の代表者が署名した。しかし、ウクライナ軍、親露派武装勢力が停戦合意を順守するという保証はない。ウクライナ危機が解決したというには、ほど遠い状態だ。
「イスラム国」封じへ連携
今回の停戦合意が達成されたのは、メルケル首相とオランド大統領が連携して、ウクライナ問題の沈静化を本気で考えたからだ。その理由は「イスラム国」が、ヨーロッパを標的とした本格的なテロ戦争を開始したからだ。1月7~9日にフランスで発生した「イスラム国」やイエメンのアルカーイダを支持するイスラム原理主義過激派によるテロを封じ込めるためには、ロシアとの連携が不可欠と独仏両国は考えている。しかし、米国は、ウクライナに対するてこ入れを止めず、「イスラム国」とロシアの二正面対決に進もうとしている。英仏はこのようなオバマ政権の姿勢は危険であると考えている。
今回の停戦合意は、ロシアの「力による現状変更」を追認する内容だ。ミンスク4カ国首脳会談における独仏の立場は、ロシアに好意的な中立であったと筆者は見ている。いずれにせよ、ウクライナ問題の主要なプレーヤーが、米国からドイツに交代したことが可視化された。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS)