栄養学を教えている大学教授に「サルコペニア」という造語を聞いた。
ギリシャ語が語源のサルコ(肉付き)とペニア(消失・欠如)の合成語で、加齢に伴う筋力の低下のことをいうそうだ。筋力の低下や筋肉量の減少が、転倒や尿失禁、臓器の機能低下などにつながっているという。
それが、さらに進むと「廃用症候群」という病気になる。俗にいう生活不活発病である。
学術用語とはいえ、廃用という言葉から連想されるのは「もう使いものにならなくなった」という状況であり、そう病名を告げられたら、患者は気分がよいものではあるまい。
加齢だけでなく、肥満、脂質異常症、糖尿病、高血圧などに伴い筋肉が衰え、病気が複合している患者らが大勢いる。廃用症候群予備軍といわれる患者らである。
廃用症候群に陥った患者はどうなるか。お金をかけて、薬と人手をかけて「介護」されて、命を全うしてもらうわけである。
廃用という冷徹なネーミングに、超高齢社会が訪れた今の日本の厳しい現実が投影されてはいないか。