昨年12月5日、大西洋に面したフロリダ半島の小都市ケープカナベラル。夜明けからまもない午前7時5分、曇った空と地面の境目からオレンジ色の炎を噴射するロケットが音もなく姿を見せると、海沿いの公園でみつめる見学者たちから大きな歓声が湧いた。ロケットは30秒ほどで雲の中に姿を消した。と思ったら、その直後、ロケットのエンジンが吐き出す轟音(ごうおん)が一帯に響き渡った。
米航空宇宙局(NASA)で、ロケットの打ち上げを担当するケネディ宇宙センターは、山手線内側の面積の9倍近い567平方キロの広大な敷地に、複数のロケット発射台、ロケット組み立て施設、管制センターなどが点在する。赤道に比較的近いため地球の自転速度を最大限に利用してロケットを打ち上げることができ、米国で最良の「宇宙港」となっている。
この日、センターに隣接するケープカナベラル空軍基地37番発射台から打ち上げられたのは、次世代の有人宇宙船「オリオン」の無人試験機。天候や機械トラブルで打ち上げ日は1日延びたが、宇宙ロケット「デルタIVヘビー」で打ち上げられたオリオンは予定通り高度5800キロ地点まで到達。地球を2周した後に大気圏に再突入して太平洋に着水し、実験は成功に終わった。