「ねえ、お父さん。あなたのいとしいいとしい子供たちは、こんなに大きくなりました」。空の上の夫に語りかける言葉は、少し震えていた。でも、幼い2人の子供の前で涙は見せたくない。悲しみを抱えながらも元気に振る舞う長女、地震のたびに布団や机に隠れる長男…。「2人を育てていかなきゃいけないのに、泣いていられない」。そう誓ったからだ。津波で夫を亡くした佐藤貴子さん(34)は11日、宮城県七ケ浜町の追悼式で遺族代表として壇上で、祈りをささげた。
4年前の3月11日は、うれしい記念日になるはずだった。前年11月に生まれた長男、丈留(たける)君(4)のお食い初めの日で、夜には仕事から戻った夫の秀行さん=当時(32)=、長女の風花(ふうか)ちゃん(9)と家族4人でごちそうを囲むことになっていた。
「いってらっしゃい」「いってきます」。いつもと同じ朝、同じ会話。それが最後になった。物流会社に勤める秀行さんは、仙台港のコンテナ置き場で作業をしていた。「大丈夫?」と送ったメールに返事はなかったが、「逃げていると思った」。だが、数日後、宮城県利府町の遺体安置所に収容されていることが判明した。