大学生がプロの映画人と共同で劇場用映画を制作する興味深い授業が京都造形芸術大学(京都市左京区)で行われている。撮影、編集、配給、宣伝までの流れを実地で学ばせるもので、3年の歳月を経て世に送り出した力作は群像劇「正しく生きる」(福岡芳穂監督)として、東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムで公開中だ。この大学で映画学科の教授を務め、大学生たちを指導してきた福岡監督の狙いは、「映画の完成は観客の手に作品が届いたとき」との意識を植え付けることにあったそうだ。
「面白そうだな」と思い受けた
プロの映画人として大学側から出演オファーを受けたのがベテラン俳優、岸部一徳(いっとく、68)だ。「監督はプロの方ですが、映画に出る人もスタッフもほとんど学生さん。僕は一言で言えば『面白そうだな』と思い、やってみることにしました。映画の好みは人それぞれ。でも、僕は出来上がった作品を見て面白いと感じましたよ。粗削りな部分がある半面、学生たちが、世の中に対して、前向きで、ちょっと革新的で、普遍的となり得る考えをしっかりと作品に忍ばせている。最近あまり見ない映画ですよね」