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【日本遊行-美の逍遥】其の十八(小鹿田焼・大分県) 家族愛が支える 民芸の魂 (3/5ページ)

2015.3.17 11:25

小鹿田焼(おんたやき)の土は、コシが強く、粘りがあり、きめが細かいが、伸ばしにくく、乾燥時に底割れを起こしやすいことから技術を要する=2014年10月1日(井浦新さん撮影)

小鹿田焼(おんたやき)の土は、コシが強く、粘りがあり、きめが細かいが、伸ばしにくく、乾燥時に底割れを起こしやすいことから技術を要する=2014年10月1日(井浦新さん撮影)【拡大】

  • 器面に飛び鉋(かんな)の文様を施す坂本工さん。ロクロは左回転、足で蹴って回す=2014年10月1日(井浦新さん撮影)
  • 時計のばねを素材に手作りした鉋(かばん)。時計のばねもいまや貴重品だ=2014年10月1日(井浦新さん撮影)
  • 軒先に並んだ大きな蓋付きの壺。打ち掛けという技法で、釉薬が柄杓掛けされ、偶然が生み出す面白さがある=2014年10月1日(井浦新さん撮影)
  • 川と斜面のあいだにたてられた、連房式の登り窯=2014年10月1日(井浦新さん撮影)

 坂本さんは、柳宗悦がこの地を訪れたとき、「すばらしい形だ。何も変えずにこのままつくり続けなさい」といわれたからだという。

 小鹿田焼は、器に個人名を入れることを慎む匿名性のなかで育まれた。この土地のどこかに、日本の美しい原風景を感じるのは、制作する人々の姿が、器それぞれに映し込まれているからだと思う。

 各窯の軒先には、山積みにされた小鹿田焼の器たちが、500円、800円と、誰もが手にできる価格で売られている。東京のギャラリーで見るのとは、ひと味もふた味も違う、この山積みの姿こそが、庶民のための本来の器の姿であると感じる。

 飛び鉋の技法は、外側に施せば手が滑りにくく、内側であれば料理が崩れにくい。実用と装飾が一体となった優れた姿で、表面に施した白化粧が日本の食材との色の相性もよく、盛った料理を引き立てる。我が家でも、食卓のスペースを、すっかり小鹿田焼の器たちが占めるようになった。

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