根津美術館で展示品を鑑賞する安倍晋三(しんぞう)首相(左)とドイツのアンゲラ・メルケル首相=2015年3月9日、東京都港区(代表撮影)【拡大】
メルケル氏の来日は、日独首脳の親交がさらに深まったことを印象づけた。一方で、一部メディアの報道ぶりをみると、メルケル氏が歴史認識問題や日中・日韓関係、原発問題について安倍首相に苦言を呈することを期待したかのようだった。
首脳会談後の共同記者会見で、メルケル氏は戦後のドイツと近隣諸国との関係について「過去の総括というのは和解のための前提の一部分だった」と言及したと、10日の朝日新聞朝刊は1面トップの大見出しで取り上げ、メルケル氏が歴史認識問題に「踏み込んだ」と解説した。同日の日本経済新聞朝刊は、同じメルケル氏の発言を「近隣国への対応で日本に不満をにじませた」と報道した。
11日の東京新聞朝刊は、9日に朝日新聞などが主催したメルケル氏の講演会での歴史認識や日中・日韓関係に関する発言を取り上げ、戦後70年の首相談話に絡め「安倍首相にくぎをさす狙いがあると受け止められた」と強調した。
ただ、これらのメルケル氏の発言は、いずれも自分から発言したものではなく、記者や講演会の聴衆からの質問に答えたものだった。メルケル氏は「私はアジア地域にアドバイスする立場にはない」と断りも入れていた。講演会で、近隣諸国に関する質問をしたのは、司会で主催者側である朝日新聞の西村陽一取締役編集担当や、その西村氏から指名を受けた姜尚中・聖学院大学長だった。