思えば、ここで紹介されている全てのシェフは1970年代生まれ。そして、僕も同世代だ。その時代に生まれた僕らはバブルも味わえず、就職先もなく、世の中から祝福された記憶がない世代とも言える。だからこそ、この本は「どっこい、そんなわれわれだって生きてます」という70年代生まれの応援歌のようにも思える。そして一方、同世代の僕らが身銭をきって彼らの料理を食べずして一体何を食べるのか?という気分にもなってくる。
本当は職業や年齢を超えてあらゆる働き「つづける」人に読んでほしい本。なのだけれど、今回はあえて1970年代生まれにより強く推すことにします。同世代人たちよ、ぜひ。(ブックディレクター 幅允孝(はば・よしたか)/SANKEI EXPRESS)
■はば・よしたか BACH(バッハ)代表。ブックディレクター。近著に『本なんて読まなくたっていいのだけれど、』(晶文社)。
「シェフを『つづける』ということ」(井川直子著/ミシマ社、1800円+税)