【本の話をしよう】
あなたは「プレイス・ハッカー」という言葉を知っていますか? 僕は初めて聞いたのだけれど、それは現場侵入者集団と呼ばれ、都市部のあらゆる立ち入り禁止区域に潜入する者たちのことを指すそうだ。彼らは、日々僕らが通り過ぎている都市の隙間に忍び込み、誰も見たことのない風景に感嘆する。そして、その景色を写真に撮り、ウェブを通じて世界中の人々と共有するのだ。
隣にある未開の場所
この『「立入禁止」をゆく』の著者、ブラッドリー・L・ギャレットは、その行為を現代の「都市探検」だという。世界中の都市部が均質化し、一方で安全に変わりゆくなかで、グローバリズムの蛍光灯では照らすことのできない暗がりに足を踏み入れることは、いまの時代の大冒険なのだ。クリックひとつで地球の裏側の「ストリート・ビュー」を眺めることができるご時世に、未開の場所がすぐ隣にあるとは、誰もが忘れていた事実だった。