秘めたる物事を秘め事として、匿名性のなかで扱っていたうちはよかった。だが、ギャレットのもうひとつの顔、研究者としての側面が、その行為を社会の中に放り込むのだ。大きな反響を呼び、多方面からの集中攻撃を受けた彼は、2012年8月17日にヒースロー空港でイギリス交通警察に逮捕された。そして、メディアの見せ物になってしまう。湧き上がる論争。そんな中で渦中のギャレットが、都市や未知について何を思い、どう行動したのかは実際に本書をひらいて確かめてほしい。
21世紀の新しい都市論は、汗まみれになりながら導き出された懸命の思索だ。彼らが追い続けた「亡霊」が本当の意味で何だったのかを考えれば、読者も住む街との新しい関係をさがせるに違いない。(ブックディレクター 幅允孝/S ANKEI EXPRESS)
■はば・よしたか BACH(バッハ)代表。ブックディレクター。近著に『本なんて読まなくたっていいのだけれど、』(晶文社)。
「『立入禁止』をゆく」(ブラッドリー・L・ギャレット著/青土社、4536円)