特にロンドンの地下には「聖杯」級の場所が多々あるようだ。世界のどんな交通網よりも多くのゴースト駅が存在するその穴蔵は、さまざまな歴史に彩られている。1994年に閉鎖されたオールドウィッチ駅は多くの駅と同じように第二次世界大戦時は防空壕(ごう)として使われていたが、古代ギリシャの神殿を飾ったエルギン・マーブルをはじめとする多くの大英博物館収蔵品が避難していた場所なのだという。そして、1972年型の木の床張り列車が訓練用に恒久停車している摩訶(まか)不思議な空間だ。彼らは侵入に成功し、「EXPLORE EVERYTHING(すべて探検しろ)」と書かれた小さなステッカーをその場に貼った。そして、ロンドン地下鉄の未知を制覇していくのである。
追い続けた「亡霊」
ちなみにきちんと触れておくなら、彼らの活動はもちろん違法行為である。小さな好奇心からスタートしたギャレットの「都市探検」だったが、多くの場所に潜入しているうちに、仲間が生まれると同時に対立するチームもできてくる。潜入に関する発表の是非で議論し、自身らの探求がどこに向かうべきなのか頭を悩ませる。そして、ギャレットがあるテレビ番組に出演したことをきっかけに、「プレイス・ハッカー」の存在が急に白日の下にさらされるのだった。