【本の話をしよう】
≪ごまかさない、ぼかさない「正面突破」≫
『女たちのジハード』など、骨太な世界観で読者をひきつける直木賞作家、篠田節子さん(59)が、作家生活25周年を記念した『インドクリスタル』を刊行した。インドを舞台に水晶を追って繰り広げられる社会派冒険エンターテインメントだ。
人工水晶デバイスの製造開発を行う企業「山峡ドルジェ」。婿養子で社長の藤岡は、社運を賭けて惑星探査機につける超高性能水晶振動子の開発に取り組んでいた。人工水晶の核となるマザークリスタルを求めて世界中を回っていた藤岡だったが、唯一、適していたのが、インドの小さな村から産出される水晶だった。
偶然立ち寄ったインドの村で運良く水晶を購入し実験に成功した藤岡は、さらに大きな塊を入手しようと裏ルートで近づこうとするが、村の風習で採掘が凍結されたり、外れ石をつかまされたりとさまざまな困難に直面する。そんなとき、宿泊先で使用人兼売春婦として働いていた少女、ロサと出会う。ロサは類いまれな記憶力を持っていた-。