ゼンマイ仕掛けのホテトル嬢を主人公にした『pink』を読んで、うーん、これは新しいパンク少女の出現だと驚いた。フツーじゃやってられない世の中をきこきこ動くリモコン仕立てで覗き見するなんて、これは只者じゃない。これで次々に岡崎を読むようになった。とくに『リバーズ・エッジ』に出入りするヴァルネラビリティ(攻撃されやすさ)とフラジリティ(傷つきやすさ)が、J・G・バラードやデヴィッド・リンチのようにすばらしかった。
当時のぼくの女友達、たとえば萩尾望都(はぎお・もと)に「岡崎京子はニューウェイブだね」と言うと「うん、私には描けない才能がほとばしってるわね」という返事。山口小夜子(さよこ)は『くちびるから散弾銃』から『東京ガールズブラボー』の方へ奔放に向かっていったキュートなモード感覚と高速なガールズトークを、「あれはね、あさってのストリートファッションのぶっちぎりなの」と絶賛していた。
そうなのだ、岡崎京子はあさってを描けるマンガ家なのである。だから、いまでも彼女の作品は今日から数えて3日目におこる出来事をぶっきらぼうだけれど、ちょっぴりエロチックに予告する。わかりやすいのは沢尻エリカが演じた『ヘルタースケルター』のりりこの運命だ。りりこは今日もタイガー・リリィとして、あの街の曲がり角の向こうであさってを占っているはずなのである。