自宅への家宅捜索後、記者団の質問に応じる朝鮮総連の許宗萬(ホ・ジョンマン)議長=2015年3月26日午前、東京都杉並区(三尾郁恵撮影)【拡大】
国交ない日朝間で「大使」
「無法で差別的な捜査は許されない。徹底的に戦う」。26日、自宅への家宅捜索後、報道陣を前に許氏はこう語気を強めた。
国交のない日朝間で朝鮮総連は「大使館」で、議長は「大使」だ-。こうした朝鮮総連側の主張に沿って、中央本部が捜索されてもトップの自宅は警察が手を出さないことが「不文律」ともみられてきた。
この事件に絡む家宅捜索は昨年5月、今回を上回る規模で実施されていた。許氏が金正恩(キム・ジョンウン)政権に送った極秘文書も見つかり、「マツタケ不正輸入容疑を裏付ける多くの資料が得られた」(捜査関係者)とされた。
それでも逮捕者がなかった背景について、政府関係者は「日朝協議が進む中、北朝鮮を刺激するのは得策ではないとの空気があったようだ」と話す。26日の強制捜査はその「空気」とともに、議長宅に踏み込んだことで「不文律」も打ち破った。日朝関係者は「拉致被害者に関して誠実な回答がない中、粛々と捜査を進めることが、かえって圧力になるとの判断があったのではないか」とみる。