自宅への家宅捜索後、記者団の質問に応じる朝鮮総連の許宗萬(ホ・ジョンマン)議長=2015年3月26日午前、東京都杉並区(三尾郁恵撮影)【拡大】
「集金マシン」機能低迷
許氏は今、微妙な立場にあった。多額の資金集めの“功績”が本国に認められ、トップに上り詰めたといわれる半面、約627億円の債務により中央本部の競売を招いた。落札企業が転売した会社から間接的に賃借することで立ち退きという「最大の失策」は免れた。ただ、転売に絡み、急な資金調達を強いられた上、組織員に経緯説明もなく、内部で不満がくすぶっているという。
制裁の一部解除で昨秋、8年ぶりに訪朝しながら金正恩第1書記(32)に面会できず、長年後ろ盾だった工作機関225局トップの康寛周(カン・グァンジュ)氏が同時期に死亡した。
いまも続く輸出入禁止で“集金マシン”としての組織機能も低迷していた。マツタケ不正輸入容疑も追い込まれていた証しともいえる。一方で、公安関係者は「不正輸入は氷山の一角。今回の捜索は正恩政権と許一家の資金ルートの解明にある」とし、捜査対象がさらに広がる可能性を指摘する。