【囲碁十段戦五番勝負第5局】高尾紳路(しんじ)十段(左)との対局を振り返る伊田篤史八段(右)=2015年4月22日午後、東京都千代田区の日本棋院(蔵賢斗撮影)【拡大】
おまけに、ファンが集まって大盤解説会が開催されているときは、その解説会にも対局者2人が足を運んで戦いを説明することもある。さらに報道のインタビューでも勝者、敗者がともにきちんとコメントするのだ。
スポーツでふがいない戦いをしたプロ選手が取材を拒否して帰ってしまった、という記事をたまに目にする。比べる相手が違うかもしれないが、囲碁将棋でそんな場面を見たことがない。
そこにはファンを大切にするという確固たる思いがある。さらに何より、勝負の厳しさが垣間見えた。自分の長所も短所もしっかり見据えないと強くなれない。感想戦は短所を知る絶好の機会だし、敗戦のショックで言葉が出ないようでは勝負の世界には身を置いていられないのだろう。
十段戦終局後、あるプロ棋士が「何より気持ちが揺れないことが大事なんだ」としみじみ語っていた。勝負が日常という非日常を生きる本当の勝負師たち。6月からは棋聖戦。“強い”人間にまた会える。(小川記代子/SANKEI EXPRESS)