ヒマラヤ山脈を望むネパールで約80年ぶりに発生した大地震。古い伝統住宅が次々と倒れ、内戦後の長い政治の混乱で疲弊した社会インフラを直撃した。犠牲者1万人との見方もある。被災者救援に手をこまねく政府を横目に、住民は助け合い、略奪・暴力などは目立たない。だが、雨期が近づき、被災地には苦難が待ち受けている。
横揺れに弱い構造
インドとチベットの中継地として栄えた首都カトマンズ。中心部ダルバール広場はヒンズー教の荘厳な寺院が立ち並び「神々の街」とも称されたが、4月25日のマグニチュード(M)7.8の揺れは木組みとれんがの寺院や家屋を粉々にした。
「古い建物が残っている街なので、地震でも倒壊しないと信じ切っていた」と自営業のシュヤム・パンタさん(34)は悔やむ。家屋倒壊による被害は深刻だ。当局によると、1日までに全国の約30万戸が全半壊、がれきに埋まり、多くの犠牲者を出した。4月28日に入った日本の国際緊急援助隊による捜索も難航した。