ここで逸ノ城が逆襲に出る。「あのまま右を差していても、いつもみたいになるから思い切って決めにいった」と、浅く入った右手を抜き、そのまま右半身でたたき落とすような突き落とし。「(突き落としは)頭になかった」と、まさかの奇襲にさすがの白鵬もつんのめるように左、右と、土俵に手を着いた。この間、わずかに3秒。
白鵬が初日に黒星を喫するのは3年ぶり。逸ノ城にとっては5度目の対戦での初勝利。場内は興奮し、投げることを禁じられた座布団が飛び交った。
審判部への批判問題をめぐってつむじを曲げ、春場所の支度部屋では報道陣の問いかけに答えることもなかった白鵬だが、この日の一番については振り返った。
「(突き落としの)タイミングがよかった。恩返しをされちゃったね」