「ぜいたく言えない」
東京都の台東、荒川両区にまたがる山谷地区。19日午後、区境にある泪橋(なみだばし)交差点から少し歩くと「1泊3000円」「全室カラーテレビ完備」などといった看板が目に飛び込んできた。平日の昼間とあって人通りはまばらだが、「満室」という張り紙も見える。
築40年以上という宿を経営する男性によると、宿泊者の多くは生活保護やアルバイトで生計を立てる高齢者。「寝たばこには気をつけろと口を酸っぱくして言っているが、時々、畳を焦がす人もいる」という。
初期消火にはスプリンクラーが有効とされるが、消防法が設置を義務付けているのは、延べ床面積が6000平方メートル以上の建物。男性は「今の値段を維持できなくなるので設置する気はない」と肩をすくめた。
「川崎の火事の話を聞いたときは(山谷と)状況が似てるので怖かった」と明かすのは、地区に住んで10年というアルバイトの男性(61)。ただ、「これだけ安い値段で泊まらせてもらっているのに、あまりぜいたくを言ってはいけないと思う」と話した。