せき込むことが当たり前
ところが先週、そんなふうに思っていた自分がまさしく風邪をひいてしまった。それも、よりによってのどからくる風邪である。2日間、私は誰にも迷惑がかからないように、ひとりも無駄に傷つけるわけにいかないと、限界まで注意を払った。が、3日目くらいから、せき込みすぎて、せきをしているという感覚そのものがなくなってしまった。病院の帰りに、ベンチに座り込んで顔を上げると、心底、嫌そうな表情で隣のベンチから立ち去る女の人と目が合った。
いくら、こちらがマスクをしていなかったからとはいえ、私は、その心の貧しさに愕然(がくぜん)とした。一体どんなふうに育ったら、あそこまで憎々しげなまなざしを向けられるのかが、まったく分からなかった。