【溝への落とし物】
「われわれがすでに手にしている原始的な人工知能は、極めて有用であることが明らかになっている。だが、完全な人工知能の開発は人類の終わりをもたらす可能性がある」
先日、英理論物理学者のホーキング博士がBBCに向けて、こんなふうに発言したらしい。さらに博士は「ひとたび人類が人工知能を開発してしまえば、それは自立し、加速度的に自らを再設計していくだろう」とまで言ったらしい。つまり、機械によって人類が滅亡するぞ、と警鐘を鳴らしたのだ。
この話を訊いたとき、実は、私の胸はこっそりと高鳴った。私は別に厭世(えんせい)家でも、退廃的な人間とも思わない。だけど、ロボットなんかにやられてたまるものかと思う一方で、機械に人間が滅ぼされるという結末は「ああ、そう来たか」と、質の高い名画を観たあとのような満足感がある。皮肉が効いていて、好きな結末だな、と私は思う。